◎ 仮差押えとはどんな手続ですか?
裁判手続で債権回収を行う場合、訴状を裁判所に提出してから判決が出るまでに、少なくとも数ヶ月程度はかかりますし、争いがある事案であれば、1年以上かかることもあります。
これだけ時間がかかってしまうと、裁判中に債務者の財産がどんどん減少してしまい、ようやく判決が出たときには資産が何も残っておらず、回収できなかった、ということにもなりかねません。
そこで、後に判決が出た場合の債権回収を確実なものにするため、裁判の前に債務者の財産を仮に差し押さえておく手続が、仮差押えです。
◎どんな財産を押さえることができますか?
1 不動産
債務者が不動産を持っている場合には、まず不動産の仮差押えを検討します。共有持分のみの仮差押えも可能ですし、未登記の建物であっても構いません。
不動産の仮差押えがされると、債務者は当該不動産の処分を制限されます。
債務者が不動産を持っていない場合や、不動産に抵当権がついていて余剰がない場合には、2以下の財産の仮差押えを検討します。
2 債権
債務者が第三者(第三債務者)に対して有している債権を押さえることが可能です。押さえる債権は、種類や額によって特定する必要があります。
預貯金債権、給料債権、代金債権などを押さえることが多いですが、たとえば債務者がクレジットの加盟店であればカード会社への代金債権、債務者が医療機関であれば診療報酬など、対象となりうる債権は事案によって様々です。
ただし、預貯金債権については、金融機関名の支店ごとにしか押さえることができません。ですから、債権者側で支店名まで特定して仮差押えの申立てを行わなければなりません。
債権の仮差押えがされると、第三債務者は債務者に対して弁済することができなくなります。
3 動産
債務者が所有している動産に対して仮差押えを行うこともできます。現金や貴金属のほか、債務者が事業者であれば、什器、備品、機械、商品などを押さえることも可能です。
動産の仮差押えは、執行官が当該動産を保管したり、差押えの表示をした状態で債務者に保管させたりする方法によって行われ、債務者は当該動産の処分を制限されます。
◎費用はどれくらいかかりますか?
1 共通する費用
(1)申立手数料(福岡地裁の場合、債務者1人あたり2000円)
(2)切手代
(3)担保金
仮差押えは、まだ判決で確定していない債権を保全するための手続です。ですから、裁判の結果、万一、債権が存在 しないことが判明してしまったら、債務者は仮差押えによって不当に損害を被ったことになります。
そのため、仮差押えを申し立てる債権者は、債務者の債権者に対する損害賠償請求権を担保するための担保金をあらかじめ供託しておかなければなりません。
担保金の金額は、仮差押命令を出す裁判所が決定します。仮差押対象財産の価額の2~3割程度とされることが多いようです。
(4)弁護士費用
2 仮差押対象財産によって必要となる費用
不動産の場合、登記を行うための登録免許税が必要となります。
動産の場合は、執行官が現地に赴いて執行を行うため、執行費用が別途必要となります。
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