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2021/06/29 | 弁護士松坂徹也のコラム(45)「『なでしこジャパン』と『サムライジャパン』」 |
「なでしこジャパン」と「サムライジャパン」
「なでしこジャパン」はサッカー女子日本代表の名称として使われていますが、この名称の由来は何でしょうか。 ずっと前から考えていたのですが、そのヒントはサッカー男子日本代表の名称「サムライジャパン」にあるように思われます。 「侍」は江戸時代以前からの武士を表すものですが、その武士とは、大名、幕府、それに万世一系天皇家を守る軍人で、いつも武器としての刀を身につけていました。もっとも、世の中が安定した江戸時代中期以降の武士は、学問や真理、文化等を学ぶ知的階層でもあったようです。 この「サムライジャパン」の名称は、いつも刀を身につけ、相手を力でなぎ倒す強い武将を意識したものと思われます。野球の日本代表も「サムライジャパン」と言われることがありますが、その趣旨は同じで、バットを「サムライジャパン」に例えたのでしょう。リオデジャネイロオリンピックの陸上男子400メートルリレーの日本選手4人は全員刀を抜く仕草をしながらトラックに現れました。これも「侍」を意識したのでしょう。 しかし、「侍」が所持している刀は武器であり、暴力装置です。そして、スポーツは平和を愛するもので、暴力とは正反対のものです。スポーツの祭典であるオリンピックの舞台上で、暴力装置まがいのものを振りかざすポーズはスポーツの冒涜だと思います。この点について、メディアは日本人に美徳を示すものとして賞賛こそすれ批判はしませんでした。これはどうかと思います。 「なでしこジャパン」に話を戻します。 「なでしこ」の由来は「大和撫子」にあると思います。「大和撫子」とは、態度や表情が穏やかで男性を立てる女性を指すもので、日本人女性の美称と言われています。 武家である侍の妻として、決して表に出ることなく、夫の後ろに控え、影で夫を支えるものというものでしょう。江戸時代の武家の妻はいつも家の中に留まり、外に出ることは極めて稀でした。妻のことを「家内」というのは、このことに由来しています。夫を示す「家内」の逆の用語は「主人」でしょう。 「大和撫子」とは、このような女性を指すものであったのです。「サムライジャパン」「なでしこジャパン」の名称の由来をこのように考えてみますと、元東京オリンピック組織委員会の森喜朗氏のジェンダー差別発言が思いうかびます。男性と対等を目指す女性のことをよく思わない森氏の意識からすると「なでしこジャパン」はお気に入りの名称ということになるのでしょうね。 私としては、ジェンダーギャップ解消の観点からこのサッカー日本代表の名称はあらためられるべきと思います。 |